2004.6.8 九州大学教職員組合執行委員会
就業規則の作成にあたって、執行委員会は人事課との9回の折衝を重ね、要求の実現を図ってきました。その結果九州大学就業通則外32規程からなる就業規則が各事業場過半数代表者の意見表明と署名を経て4月1日に制定されました。九州大学就業通則及び九州大学教員人事規則以外の規程の多くが3月末に組合に提示されたこともあり、私たちは、この2本の規則と定員外職員の待遇に関わる要求を中心として折衝をしてきました。
この間の成果と問題点を明らかにし、今後の組合の課題を明らかにするものです。
(1)03年9月30日の学長交渉で、法人化後の雇用・労働条件の低下を許さない上で重要な回答を引き出しました。「原則として承継職員等(学長発令の定員外職員、パートタイム職員を含む)について、現行の雇用・労働条件を下回らないようにする。」と回答し、同時に将来計画委員会(部局長会議)で「承継職員等の職種・職位、給与等に係る法人以降直後の労働条件は、原則として移行前と同位・同等のものとする。」と決定しています。
全国にさきがけ、このような回答を引き出したのは、本組合の法人化にあたって4項目署名運動(1336筆)により、「法人化による労働・雇用条件の引き下げは許されない。」との学内世論を盛り上げることができたことによります。また、これが就業規則作成の土台となり、一連の当局との折衝を有利に展開できた力ともなりました。
(2)当初提案された九州大学教員人事規則(案)には、教員の解雇、降任、懲戒等の条項に「教員研究評議会の審査の結果によらなければ、その意に反して解雇(降任等)されることはない。」と前段に「教授会の議に基づく」 が除かれていたが、折衝の過程で教育公務員特例法の精神を受け継ぐことで「教授会の申出に基づき」を全てに追加させることができました。また、勤務場所を離れて行う(自宅研修を含む。)研修権も規定されました。これらのことは、教育公務員特例法の精神を法人化後も受け継ぐことができたものとして評価できます。
(3)定員外職員・時間雇用職員就業規則について、当局が当初案を提示する前の1月23日に要求書を提出し折衝してきました。その結果、「平成16年3月30日に在職し4月以降も在職する定員外職員について60歳まで更新する。(有期契約職員就業規則附則2)」、同様に「法人化前に在職しているパートタイム職員について、65歳まで更新する。(パートタイム職員就業規則附則2)」並びに「長期にわたって働いているアルバイト職員の学長発令化と賃金等の維持」を実現することができ、長期化している定員外職員、パートタイム職員等の雇用を守ることができました。
(4)遵守事項の条項で多くの改善をさせました。当初案では、政治活動、宗教活動、放送・宣伝・集会及び文書画の回覧掲示・配布を禁止していました。学問の自由を尊重すべき大学での集会・言論・出版その他の表現の自由への規制は、大学には有害であること、また、労働組合の活動を規制することなどで削除するよう折衝した結果、殆どの問題条項を削除させました。ただし、「本学内で、選挙運動その他の政治活動及び布教活動をしてはならない。(通則26条5号)」がのこっており、政治活動一般を規制する余地をのこしており今後の監視活動が必要と言えます。
(5)解雇、懲戒にかかる不服申し立ての制度を「九州大学懲戒等規程」に規定させました。また、教員の任期に関する規定で「再任の可否にかかわる教授会の審査結果に不服がある者は、教育研究評議会に申し立てを行うことができる。」とする条項を全国に先駆けて、盛り込ませることができました。教授会での恣意的な審査をさせない上で重要な条項といえます。
(6)雇用不安が広がっている中で、解雇条項の定め方は重要です。当初提案された 九州大学就業通則(案)及び九州大学教員人事規則(案)の解雇条項は、基本的な変更のないまま制定されました。労基法によると、解雇条項は具体的表現で制限列挙であるべきにもかかわらず、規定が曖昧で拡大解釈の可能性があるものとして、「教員(職員)としての地位を維持するのが適当でない。(教員人事規則6条2項4号)」が削除要求に反して残ることになりました。
また、いわゆる「整理解雇条項」も規定されています。判例で確定している「整理解雇の4要件」=[@人員を整理縮小する必要があること。A解雇を回避する努力を尽くすことB被解雇者の選定が合理的であること、C整理解雇について、労働組合・労働者と誠実な協議を行っていること。] が整理解雇の前提であることを周知徹底させ、拡大解釈を許さないこと、さらに組合員の解雇については本組合との協議によることを労働協約にすることが今後の課題といえます。
(7)昼休み45分、終業時刻17時15分は、労働時間短縮の流れに逆行するものであり、従来通りの労働・休憩時間を要求してきましたが、終業時刻17時15分、超過勤務は17時30分から開始と後退しました 。しかし、昼休みは、休憩時間45分に15分の休息時間を加え実質60分の昼休みが確保されました。
(8)定年については、教員のみを年金支給開始年齢に応じ順次65歳まで引き上げることになりました。教員以外の職員を60歳のままに据え置くことは、不均衡取扱いとして不当であり、今後の労使交渉にかかっています。
(9)知的財産権について、就業規則に規定し教職員の権利を明確にするよう要求してきました。しかし、教員の労働契約の重要な内容である知的財産に関する規定を就業規則の中で規定し、教職員の意見を反映させることなく、就業規則の外に「九州大学知的財産取扱い規則」として制定しています。
(10)男女共同参画の理念を就業通則の目的の条項に規定するよう要求してきましたが、盛り込ませることができませんでした。また、「女性職員の保護」を正確に「女性職員の母性保護」に訂正するよう要求しましたが、実現していません。
(11)様々な企業・官公庁などの組織において、組織内部に社会的不正が起こった場合に、それを正していくことが求められています。大学においても、自浄的な仕組みが要請されています。そのため、「正当な理由を持って大学における社会的正義に関わる告発をした職員に対する保護については、内部告発者の保護規定による。」と就業通則に規定するよう要求してきましたが、実現していません。
(12)9事業場中、福岡地区病院事業場と別府地区病院事業場を除いた7事業場で組合推薦の過半数代表者を選出することができました。さらに、過半数代表者(代理も含む。)による教職員に対する説明会は、各事業場・部局で延べ17回、参加者延べ569名で開催され、その中で就業規則(案)、労使協定に関する組合の考え方を提起し、それに対する教職員の意見・要望を集約することでき、それらの声を力にして、教職員の意向を就業規則・労使協定に盛り込むよう当局との折衝を重ねてきました。
組合推薦の過半数代表者と学長との間で締結された個々の労使協定について、次のような成果と問題点があります。
@ 時間外労働及び休日労働に関する協定では、「健康状態などへの配慮(協定書第2条)」で長時間労働の規制、「労働時間の適正把握(協定書第3条)」で労働時間の適正把握義務を明記させ、さらに覚え書として、「適正把握の方法としてタイムカード導入の検討」を約束させました。
しかし、職場では、長時間労働、不払い残業は何ら規制されることなく、協定の内容が生かされているとは言えない状況です。過半数代表者による協定遵守の申入れ、団体交渉で取上げる、労基署に訴えるなどの取り組みが今後考えられます。
A育児・介護休業に関する協定では、パートタイム職員、定員外職員についても育児・介護休業がとれるよう、協定でそれらの者を除外しないことを基本に交渉にあたってきました。その結果、長期化している定員外職員・パートタイム職員が新たに育児・介護休業がとれるようになりました。(ただし、「家族内で育児・介護が可能な者がいる場合」は除く。) さらに、法人化後採用された3年雇用のパート・定員外職員も「家族内で育児・介護が可能な者がいる場合」を除いて育児・介護休業がとれるようになりました。
B教員の専門業務型裁量労働制の導入について
この制度は、教員が、自身の業務遂行の手段及び時間配分を自主的に決めることができるものです。しかし、多くの教員から「業績評価制と結びつけられるのではないか」「過重労働を強いられることになるのではないか」という意見が出されました。これらの声を受け、組合は大学と交渉し、以下のことを、協定を締結するにあたって当局と確認し、覚え書きに明記させました。
1)裁量労働制は、教員の業績審査制とは結びつくものではない。2)過重労働・安全衛生の問題などが生じないよう手当をすること。3)一緒に働く技術職員などの勤務に不都合がないようにすること。
また、次のように協定条項を修正させました。
1)教職員自体が自主的に裁量労働制の適用除外を部局長に申請することができるようにしました。2)教員の超過勤務手当対象となる職務を大幅に増やしました。3)深夜・休日等に仕事をしていたときに事故等があつた場合にも、労災などの認定が問題なく行えるようにさせました。
裁量労働制の大学教員への適用は、私立大学も含め初めてのことであり、今後、実施していく中で問題点が出たら、協定の内容を変えるなど必要となってくることも考えられます。
C給与の一部控除に関する協定の作成にあたって、組合費の控除を入れるよう要求しましたが、今回は実現しませんでした。しかし、「組合費の控除については、新たに設計予定の人事給与計算システムの中で控除可能となるよう検討する。」との人事課長の確認文書をとりました。
D演習林事業場過半数代表者の意見について、
北海道演習林、福岡演習林及び宮崎演習林を一つにまとめた演習林事業場過半数代表者による意見書の中には、演習林に働く教職員の特有の問題が上げられています。1)特殊勤務手当である山上等作業手当が福岡演習林だけ外されている問題と作業期間の問題2)建設機械(重機)による作業への手当 3)労働安全衛生法上の大学法人責任明確化の問題等々、遠隔地事業場で大学当局に教職員の声が届きにくいこともあり、今後組合が連携を強めて行くことが求められています。